ちょ しゃ           しょうかい
著者の紹介 はじめにもどる
 
共焦点レーザー顕微鏡を用いた 3D 教材の開発

奈良教育大学 教育学部 学校教育教員養成課程 
理数・生活科学コース 理科教育専修 
徳野 陽子



概要

 本研究では、中学校理科の教科書で扱われる「生物」に関連した内容に着目し、3D 教材を作成した。教科書に登場する生物の写真や模式図は、それ自体美しいものではあるが、写真が提供する情報は 2 次元的なものであり、生物の厚みやそれぞれの詳細な構造のつながりを立体的に理解することは難しい。生物の構造を理解することは、その機能を理解する上で非常に大切なことは疑うべくもないが、このことを授業や実験で示すことは、実際の教育現場で保有する顕微鏡では、非常に難しいといわざるを得ない。そこで、本研究では、こうした細胞単位での微細な構造に関して、共焦点レーザー顕微鏡を用いた 3D 立体再構築を行い、教科書の内容をより良くサポートする 3D 教材を開発することを目的とし、微小管を標識する抗体を用いた抗体染色および核を標識する DAPI 染色を行うことにより、ラッパウニの受精卵からプリズム胚における発生の様子と細胞骨格及び核の構造に関する 3D 教材を完成させた。これは、中学校学習指導要領(2008)に新たに導入された「動物の生活と生物の変遷」や「生命の連続性」の単元において、また高校用教科書では「発生」という単元で取り上げられる内容である。この教材は、得られた数十枚の光学切片像を、AVI ファイルとして連続的に示すことや、コンピューターによる立体再構築画像の回転するムービーとして示すことが可能なものとなっている。また、本研究では、視覚のバリアフリーについても考慮し、共焦点レーザー顕微鏡付属の擬似カラー変換機能を用いて、出来る限り多くの利用者が識別可能な配色を採用した。


序論

 科学技術基本計画は、平成 7 年 11 月に公布・施行された科学技術基本法に基づき、科学技術の振興に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るための基本的な計画であり、平成 23 年 8 月に文部科学省から発表された(http://www.mext.go.jp/component/a_menu/science/detail/__icsFiles/afieldfile/2011/08/19/ 1293746_02.pdf)。そこでは、「我が国では、諸外国と比較して、科学について学ぶことに興味を持ち、理数系の勉強が楽しいと答える中学生及び高校生の割合が低いとされており、初等中等教育の段階から理数科目への関心を高め、理数好きの子ども達の裾野を拡大するとともに、優れた素質を持つ児童生徒を発掘しその才能を伸ばすための一貫した取り組みを推進する。」とされている。その推進方策の一つに「デジタル教材の活用」が挙げられている。デジタル教材の中でも 3D 教材は、特に注目を集めており、アメリカやイギリスでは、企業とタイアップし、3D 教材を使った授業と従来の教育方法との比較調査・研究が行われており、そのメリットが注目されている現状である。
 また、近年、文部科学省が行った学校における教育の情報化等の実態に関する調査(平成 24 年 3 月現在)の統計(http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?bid=000001041083&cycode=0)によると、授業中に Information and Communication Technology(ICT)を活用して指導する能力のうち、公立の小学校,中学校,高等学校,特別支援学校及び中等教育学校を対象とした調査で『学習に対する児童の興味・関心を高めるために、コンピューターや提示装置などを活用して資料などを効果的に提示する』は 69.2% の教師が「わりにできる」もしくは「ややできる」と回答している。また、『わかりやすく説明したり、児童の思考や理解を深めたりするために、コンピューターや提示装置などを活用して資料などを効果的に提示する』については、65.4% の教師が「わりにできる」もしくは「ややできる」と回答している。前年度の同項目ではそれぞれ 66.2%、62.5% であり、授業中に ICT を活用して指導する能力を持つ教員は約 7 割近くにまで増加している。この結果は、近年の学校教育の現場で ICT を活用する割合が増加しているということであり、本研究で開発する 3D 教材はこれからの学校教育の現場で活かされやすく、現場で求められる教材であると考える。平成 20 年 12 月に、総務省から小中学校の ICT 教育における中長期ビジョンの一部が出され、総務省の原口総務大臣は、「緑の分権改革推進プラン」「ICT 維新ビジョン」の二つを、原口ビジョンとして発表した。その中の「ICT 維新ビジョン」の「地域の絆の再生」の目標の中で、「デジタル教科書を全ての小中学校全生徒に配備(2015年)」という動きがある。したがって、実際の教育現場における ICT を活用する授業の増加に伴い、生徒の理解しやすい 3D 教材の開発へのニーズは年々増加すると考えられる。
 近年、映画館等で鑑賞することが可能となった 3D 映像は、1990年代に開発が始まり、当初は業務用としての高価なものでしかなかった。しかし、昨今ではゲーム機やテレビのディスプレイモニターとして比較的低価格での普及が始まり、裸眼 3D として注目を集めている。しかしながら、ゲーム機はともかくとして、テレビに関しては放送局側からの 3D 映像の供給が不十分であるため、一般に十分に普及したと言える状態ではない。言い換えると、各教育機関が裸眼 3D モニターのユーザーとしてこれを所有し得るには、少なくとも数年以上の期間がかかるものと推測される。したがって、この過渡期において、3D 教材を一般に紹介するためには、特殊なモニターや新しいタイプの情報源を必要としない、コンピューターにより再構築した画像を回転させる技術や、立体構造物の断面を連続的に観察するといった既存の技術により立体を把握させる方法が妥当であると考えられる。1980 年代から研究者の間で普及してきたこの立体把握の技術は、現代の学校教育の現場でも有効に活用できるものと考える。さらに、本研究で開発される教材は不特定多数の生徒を対象とするため、視覚の問題には特に気を配らねばならない。実際にホームページに掲載する場合には、色覚に問題を抱えたユーザーを考慮し、岡部・伊藤(2002)の報告を参考にし、出来る限り多くの利用者が識別可能な配色を用いるようにする必要がある。
 本研究では、中学校理科の教科書で扱われる「生物」に関連した内容に着目し、3D 教材を作成した。この教材では、教科書の 2 次元的な情報では把握しにくい、細胞単位での微細な構造に関して、共焦点レーザー顕微鏡を用いた 3D 立体再構築を行い、教科書の内容をより良くサポートする 3D 映像を作成し、将来的にインターネット上で活用できる教材として、広く一般に公開することを目的とした。


材料・方法
 材料
 本研究では、発生の単元で教科書に取り上げられているウニを題材とした。用いたウニは、京都大学フィールド科学教育研究センター瀬戸臨海実験所の協力により実験所近隣の海で採集したラッパウニ(Toxopneustes pileolus)とムラサキウニ(Anthocidaris crassispina)である。シャーレ内において、27℃ で人工授精させ、発生の各ステージごとに後述する固定液を用いて固定し、観察に用いた。ただし、先行実験において双方のウニ卵を、蛍光顕微鏡で観察したところ、ムラサキウニに関しては、蛍光染色を施さない状態においても卵黄色素の持つ自家蛍光、内部構造が鮮明に観察できないことから、卵黄が無色透明なラッパウニのみ使用することとした。

 蛍光抗体染色ラッパウニ試料の調整
 採集されたウニは、1 mM 塩化アセチルコリン水溶液を用いて放卵・放精させ、人工受精させた。未受精卵からプルテウス幼生まで継続的に観察し、各段階において3% ホルムアルデヒドを含む PBS(pH 7.0)で、40分間室温(24 ± 1℃)にて化学固定した。さらに、抗体を浸透させる目的で、予め -20℃ に冷却した100% アセトンにより冷凍庫内において 30 分間処理し、膜の可溶化処理を行った。膜の可溶化後、PB(pH7.0)で一度洗浄した後、PBS(pH 7.0)により 20 分間室温にて 3 回洗浄し、得られた細胞懸濁液を抗体染色に用いた。

 蛍光抗体染色
 抗体染色では、50 μl の細胞懸濁液に対して、2 μl の一次抗体を加え(最終濃度 8 μg/ml)、室温で 90 分間放置した。一次抗体には、抗チューブリン抗体(anti-α-tubulin antibody, TAB-2, NeoMarkers)を用いた。PBS(pH 7.0)により3 回洗浄した後、上澄みを除去し、二次抗体として、ヤギ抗マウス(GAM-Alexa Fluor 488, Molecular Probes)を 50 μl 加え(最終濃度 40 μg/ml)、60 分間室温暗所にて蛍光標識 (緑色) した。PBS(pH 7.0)により2 回洗浄後、4;6-Diamidino-2-phenylindole, dihydrochloride(DAPI)を加え10 分間暗室で染色し、その後 PBS(pH 7.0)により 1 回洗浄し、蛍光観察試料とした。

 プレパラートの作成
3D 構造観察においては、細胞の立体構造を保持することは必要不可欠である。したがって、スライドガラスとカバーガラスにより細胞が押しつぶされないよう工夫する必要があった。そこで、本研究では、プレパラート作成の際、パラフィルムを加工した幅約 2 mm の短冊を枕として用いた。スライドグラス上に上述のパラフィルムでできた 2 重の枠を設け、内側の枠に一辺 10 mm の窓を作った。封入剤であるネイルエナメルの侵入を外枠で阻止し、内枠内に細胞懸濁液を配置させ、パラフィルムの厚さでサンプルの押しつぶしを避ける目的である(図 1)。そこへ 2μl の蛍光退色防止剤と同量の細胞懸濁液をのせ、カバーガラスをかけ、周りをネイルエナメルで封入した。このようにして出来たプレパラートを、共焦点レーザー顕微鏡観察試料とした。














                                                    


 蛍光標識観察
 蛍光標識確認作業においては、倒立顕微鏡(IX-70, Olympus)に搭載した落射蛍光装置を用い、緑色、青色蛍光観察には、それぞれ U-MNIBA、U-MWU フィルターを用いた。さらに、3D 画像の構築においては、共焦点レーザー顕微鏡(Fluoview FV10i, Olympus)を用い、得られた光学断面像は、顕微鏡付属の解析ソフトにより 3D 再構築し、3D 画像を作製した。
 共焦点レーザー顕微鏡(Fluoview FV10i、Olympus)は、一度に試料全体を照射せず、試料中のある深度一点に焦点を合わせる。そのため、ピンホールを通過した非常に明るいレーザー光を用いる。ピンホールからのレーザー光により焦点位置でサンプルの蛍光物質を励起する。焦点位置からのサンプルの放射蛍光はピンホールを通して光検出器の入り口で結像する。焦点が合っている部分からの光だけがピンホールに集まり光検出器へ入るので、レーザー光の反射角度を変えることで焦点面を走査し、得られた断面像の集積・再構築により立体的画像を作成することが可能である。


結果と考察

  ラッパウニの 3D 教材
 図 2 には、抗チューブリン抗体標識および DAPI 染色によ
り、それぞれ細胞骨格及び核を可視化したラッパウニの共焦
点レーザー顕微鏡像を示している。この画像は、60 枚の光学
切片から得られた情報をもとに、三次元再構築した回転映像
の静止画を示しているが、実際には AVI ファイルとして記録
しているので、再生することにより回転させることが可能で
ある。また、60 枚の光学切片を連続的にムービーとして示す
 AVI ファイルも作成した。同様な  AVI ファイルは、全ての
サンプルに対して作成したが、いずれも約 50 枚から 70 枚ほ
どの光学切片を作成している。
 図 2 のサンプルにおいては、微小管を GAM- Alexa Fluor 488
 により緑色に、核を DAPI により青色に染め分けているが、共
焦点レーザー顕微鏡の擬似カラー変換機能により、 DAPI で化
学染色された核は赤色蛍光で示している。一方、抗チューブリ
ン抗体の緑色蛍光により中心体および紡錘糸などの細胞内骨格
が明瞭に確認できる。抗チューブリン抗体は、細胞の骨格とし
て知られる微小管を標識するが、このため微小管でできた紡錘
糸が一本一本はっきりと観察することが出来る。また、図 2 は
第一卵割後期の様子を示しているが、紡錘体形成により、赤い
染色体が両極へ分かれていく様子が観察できる。教科書では、
模式的に約 5~6 本の紡錘糸により染色体が両極へと移動して
いる様子が描かれているが、実際には数十本の紡錘糸により
紡錘体が形成され、染色体が両極へと分かれていく様子が分かる。
 また、以下の図 3 では、受精卵分裂中期からプリズム幼生期までの各段階の画像を示している。ウニは、8 細胞期の頃まで等割を繰り返すため、それぞれの割球の大きさがほぼ同じ大きさであることが分かる(図 3, A-E)。受精卵から 2 細胞期の頃には、卵軸(卵の方向性を決定する基本になる軸)に平行な方向に卵割(経割)が起こり、2 個の割球ができる(図 3C)。卵割により出来た割球は、成長しないため卵割を繰り返すごとに割球の大きさが小さくなっていることが分かる。さらに、再び経割が起こり、4 個の割球となる(図 3D)。4 細胞期から 8 細胞期にかけては、卵軸に垂直な方向に卵割(緯割)が起こり、8 個の割球となる(図 3E)。8 細胞期から16 細胞期にかけては、不等割が起こり、動物極側では経割により 8 個の中割球、植物極側では緯割により 4 個の大割球と 4 個の小割球ができる。桑実胚の頃になると、一つ一つの割球の大きさが、とても小さくなっていることが分かる(図 3F)。また、図 3H に示したように、桑実胚の頃になると胚の内部に卵割腔と呼ばれる空洞ができる。卵割腔は、胞胚期になると胞胚腔と呼ばれるようになり、割球の表面には活動するための繊毛が生え始める。ウニではこの胞胚期に孵化が起こる。さらに発生が進み、原腸胚と呼ばれる時期になると図 3I、J に示したような形に変化する。






































 図 4 に原腸胚期を拡大した画像を示した。図 4A に示したように、原腸胚の頃には植物極側(写真下側)から原腸の陥入が起こり将来肛門となる原口ができる。原腸の先端からは、結合組織などに分化する二次間充織が出来てくる(図 4B)。二次間充織の出現に先行し、16 細胞期の 4 個の小割球に由来する細胞群が一次間充織として、胞胚腔内に遊離し、幼生の骨格を形成するものとなる。この骨格は、原腸胚の後期の頃には骨片として観察される(図 4B)。プリズム幼生期の頃になると、原腸が表皮に達し口が形成される(図 4C)。



















 一方、市販の教科書(ex. 中学校理科 未来へひろがるサ
イエンス 2,3,啓林館; 中学校理科 理科の世界 2 年, 3 年,
 大日本図書; 中学校理科 新しい科学 2 年, 3 年,高等学校 
生物, 東京書籍,etc.)や資料集(ex. 視覚でとらえるフォ
トサイエンス 生物図録,数研出版,etc.)において、ウニ受
精卵の発生の様子は、主に光学顕微鏡写真や模式図を使用し
て図示される場合が多い。本研究で撮影した光学顕微鏡写真
を図 5 に示す。しかしながら、図 5 に示したような光学顕
微鏡写真では、胚の微細な内部構造は観察できず、卵割のど
のような時期にあるのか理解することはできない.また平面
であるため、細胞の厚みや個々の割球の立体的配置を理解す
ることが困難である。一方、図2-4 に示したように共焦点レ
ーザー顕微鏡写真を用いて撮影した画像では、受精卵の内部
構造がはっきりと観察でき、卵割のどのような時期であるの
かを把握することが容易であり、体細胞分裂で観察される紡
錘体形成が、卵割でも起きていることを理解することが可能
である。さらに、これらの画像を回転させることで、写真や
模式図では理解の難しい、割球相互の位置や、一次間充織・
骨片・二次間充織・原口・原腸貫入の立体的な把握が可能で
ある。

 視覚のバリアフリーを考慮した配色
 前述したように、本研究で用いた共焦点レーザー顕微鏡に
は、擬似カラーを用いて本来の蛍光色と異なる色合いに変化
させる変換機能が付属している。図 6 には、一例として、顕
微鏡の付属機能によって作り出した様々な配色パターンを示
している。図 6 に示したように、この機能を活かして様々なカラーバリエーションを作ることが可能である。図 2や図3のラッパウニの共焦点レーザー顕微鏡像では、敢えて緑色蛍光と赤色蛍光を用いて微小管と核を示しているが、これは緑と赤の蛍光が重なった部分は黄色に観察されることから、標識されるターゲットの分布が一致していることを確認するために、研究者の間で慣例的に使われる配色である。しかしながら、こうした配色は、赤緑色盲の人の場合には、黄色と緑の部分がほとんど区別できず、また、第 1 色盲の人の場合では、赤の部分でも暗くなるという理由から、現在では赤の代わりにマゼンタを利用することが推奨されている。岡部・伊藤(2002)によれば、これらの配色であれば色盲の人であっても、二つの色の分布をよく理解できると報告している。図 6A は、赤の代わりにマゼンタを利用した場合の例を示しているが、赤の場合と比べても、緑色とのコントラストに遜色は無い。このように、将来的にデジタル教材としてホームページ上に掲載する場合には、色覚に問題を抱えたユーザーを考慮し、岡部・伊藤(2002)の報告を参考に、出来る限り多くの利用者が識別可能な配色を準備することが必要であると考える。

































 教材化のためのホームページ作成
 本研究では、多くの教育現場で活用を期待して、作成した断層写真や 3D 画像を AVI ファイルとしてまとめ、ホームページ上に掲載することを計画している。ホームページ(HP)の作成にはMacintosh 附属のソフトである iweb を利用した。図 7 には、HP の一例を示しているが、HP では世代を問わず利用してもらうことができるように漢字にはふりがなを付け、子どもたちの利用を考えて、説明はなるべく簡単にすることを考慮した。さらに、発生の各ステージの卵あるいは胚の内部構造の部分名称を示した写真を載せるなど工夫を施した。また、色覚に問題を抱えたユーザーのことを考慮し、それぞれの段階の卵あるいは胚につき 11 種類の配色を用意した。以下に、ホームページの作成の際に配慮した点、また構成を示している。










































 まとめ
 本研究では、生物を学習していく上で最も基本的な『細胞』および動物細胞の『発生』についてラッパウニ(Toxopneustes pileolus)を題材とし教材化した。また、開発にあたっては、視覚バリアフリーを念頭においた配色パターンを考慮し、出来る限り多くの利用者が識別可能な配色を採用した。これらの題材は、中学校理科の教科書で扱われる「生物」に関連した内容について、実際に使われている教科書に基づいて決定したが、中高生が使っている教科書には、この他植物細胞、動物細胞、筋細胞、卵、精子、神経細胞、赤血球など多くの細胞が掲載されている。本研究では、共焦点レーザー顕微鏡観察のための適正な資料作成に多くの時間を費やす結果となり、『ウニ(等黄卵)の発生の様子』のみの教材開発となった。しかし、さらに多くの教材開発が今後必要であると考えられる。
 2 次元的な写真や模式図を使った教科書では、一方向からの情報しか提示できないが、共焦点レーザー顕微鏡を用いた 3D 画像にすることにより、細胞の厚みや立体構造、細胞内小器官の立体的位置関係の把握、各細胞相互の関わりなどの幅広い情報を提示することが出来る。それゆえ、3D 画像は、生物の機能を理解する上で大切な生物の構造の理解の手助けとなると考えられる。また、無色透明な細胞の内部を蛍光試薬を用いて可視化することで、教科書の模式図と対比し、実際の生物の持つ構造と見比べることが可能であり、どのように同じでどのように違うのか理解することが出来る。蛍光色で示した色彩鮮やかな映像は、天然の配色とは異なるため間違った印象を与えてしまうといったリスクがある反面、色彩鮮やかなため、映像が強調されるので構造の理解を助け、子ども達の興味・関心を惹きやすいと考えられる。この教材を ICT 教材として利用して頂くことを切に望むばかりであるが、利用する指導者には、上述したような人工的な色づけである等の説明の配慮をお願いしたい。興味・関心を抱いた子ども達の自由な発想は、大人の既成概念に無いものを実物の中に発見するかもしれない。その一助となることを祈っている。


謝辞

 本研究を行うにあたって、ご指導、助言を頂いた石田正樹教授に深く感謝いたします。また、実験材料となったラッパウニ・ムラサキウニを提供してくださいました京都大学フィールド科学教育研究センター瀬戸臨海実験所の方々、データ提供にご協力いただいた奈良教育大学 細胞生物学研究室 福岡 万里奈さんに深く感謝いたします。


参考文献

視覚でとらえるフォトサイエンス 生物図録 第 18 刷 鈴木孝仁(監)(2006)数研出版
中学校理科用文部科学省検定済教科書 未来へひろがるサイエンス 2.啓林館.2012
中学校理科用文部科学省検定済教科書 未来へひろがるサイエンス 3.啓林館.2012
中学校理科用文部科学省検定済教科書 理科の世界 2 年.大日本図書.2012
中学校理科用文部科学省検定済教科書 理科の世界 3 年.大日本図書.2012
中学校理科用文部科学省検定済教科書 新しい科学 2 年.東京書籍.2012
中学校理科用文部科学省検定済教科書 新しい科学 3 年.東京書籍.2012
高等学校用文部科学省検定済教科書 生物.東京書籍.2012
岡部・伊藤(2002)色覚の多様性と色覚バリアフリーなプレゼンテーション(全 3 回).
        第 3 回 すべての人に見やすくするためには、どのように配慮すればよいか.細胞工学.21,1080-1104.
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                       
http://livepage.apple.co.jp/http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?bid=000001041083&cycode=0shapeimage_5_link_0shapeimage_5_link_1
しつ もん ばこ
質問箱